ストレスチェック
ストレスチェックの実施者は、医師または実務担当者であるが、この実務担当者は人事権を持つ従業員が、携わってはいけない事となっています。
そして、実施者は、高ストレス者の選出方法について、予め何点以上の者は面接するといた基準を設けておかなければなりません。
記入を終えた質問票は、実施者が回収する必要があります。
その結果(ストレスの程度、評価結果、高ストレスか否か、医師の面接指導が必要か否か)は、実施者から直接本人に通知されます。
企業には、返って来ない仕組みなのです。
なぜなら、企業が負うのは、実施義務であり、質問票に回答してもらえるように、案内していれば足りるからです。
更に、実施者はストレスの高い状態にある者に対して医師の面接を受けてもらったり、会社側に対して、仕事の軽減などの措置を実施してもらったり等の職場環境の改善につなげたりしなければなりません。
また、回答結果が第三者に閲覧されないように保存する義務も負わなければなりません。
事業主が事業を行っていく上で、法律の遵守は欠かせません。
事業主側にして見れば、あれもやらなくてはいけない、これもやらなくてはいけない等、法律の制限の中で事業活動を行っていかなければならないのです。
法律は一度制定されると、中々消滅はしてくれません。
例えば、労働安全衛生法だが、今回制定されたストレスチェック以前にも、似たような従業員の年一回の健康診断の実施が、事業主の責務として、実施する事が義務付けられています。
それに、加えて今回のストレスチェック制度。どちらも実施するのに、費用はかかります。
労働安全衛生法はこの他にも、努力義務として事務所内の明るさ(照度)や温度、男女従業員数によるトイレの数までも定められています。
実際にこれらを全てクリアするには、相当な時間と費用を要するのではないでしょうか?
今回の従業員の為のストレスチェック制度、従業員に実施する前に法律の制限の中で事業主の方が、過度のストレスを抱えてしまいそうとも言いたくなります。
誰にだって、ストレスはあります。ある程度のストレスがないと、やる気も出ませんし、頑張る力だって出ません。
ストレスチェック制度は、それを実施する事によって、うつ病患者を発見しその方を会社の外に追い出すような、そんな制度ではありません。
ストレスは精神的な圧力の事ですから、強過ぎて、ストレス耐性を打ち破って、ストレスに対抗出来る力を失ってしまうと、果てはうつ病になってしまいます。
うつ病は、風邪のように誰でもなりうる病気です。会社としては、社員がうつ病になってしまうだけで、大きな損失を免れません。
本来、従業員が健康体であった時のような生産性は期待出来ません。
逆に適度なストレスなら、良好な職場環境を生み出し、生産性も向上していく事でしょう。
その為には、会社としても良い仕組みを作り、それを達成するためのリーダーシップなどが大切になります。
まさに、会社を良くするためのストレスチェック制度なのです。
人は誰でも多かれ少なかれ、ストレスと付き合っていかなければなりません。
今回は新入社員の例を考えて見ましょう。
既存の社員とは違い、新入社員はついこの間までは学生です。
学生生活では、周囲は同年代が多かった事でしょう。
しかし、社会人になった今は、どうだろう。周囲の年齢はまちまちです。
自分の父親以上の年齢の人も働いている事でしょう。
しかも、上下関係もある。仕事上の付き合いだって、時にはあるでしょう。
彼等にとっては、社会人になると言う事は、著しい環境の変化に対応していかなければならないのです。
そこには、当然ストレスも生まれることでしょう。
将来、会社を背負っていく彼等を、会社としてはどう接していけば良いのでしょうか?
彼等を育てていくことは勿論、彼らが働きやすいように、健康面、心理面でサポートしていく必要があるのではないでしょうか。
心身共に健康であれば、彼らも働きやすく、将来的にも大きく成長していき、更には会社を発展させていく原動力になってくれることでしょう。
健康診断の実施が、企業に義務付けられている事は周知のことと思います。
では、健康診断を実施しているのだから、ストレスチェックは実施しなくてもいいのでは・・・。そう思いたくなるのも、事実かも知れない。
しかし、健康診断は、身体の各機能面の状態を検査するものです。それに反して、ストレスチェックは、従業員の心理的な面がどんな状態であるかを、知るためのものです。
その結果によって、メンタルヘルスや就業面においての措置を講ずるか否かを判定するためのものです。
“病は気から“なんて、言葉を思い出します。いくら身体の各機能が正常だからといって、心理的な面から犯されていけば、病は発症してしまうものです。
現代社会においては、ストレスから発症する病気は多いと言われています。逆に言えば、ストレスを解消する事によって病の発症の多くは、未然に防げるのです。
そのためにも、企業は従業員と一体となってストレスの解消に努めていくべきでは、ないでしょうか?